椿の花通信 112号(7月号)

昨年流行したデング熱を覚えていますか?

昨年の夏、代々木公園の周辺で蚊に刺された人が、デング病を発症しました。その数はおよそ160名で、千葉県においても千葉市稲毛区で1名の発症がありました。
デング熱は、デングウイルスの感染症で、熱帯・亜熱帯地方を中心に年間約3億9000万人が感染し、9600万人が発症します。海外の流行地で感染し、日本に帰国あるいは入国してから発症した人は毎年200名近くいますが、デングウイルスに感染しても症状が出ない人はその4倍いると推定されます。
デング熱は人から人に直接感染することはなく、日本ではヒトスジシマカが媒介します。海外で感染した人を刺して体内でデングウイルスを増殖させたヒトスジシマカが、他人の血を吸血した時に感染させます。昨年の代々木公園の流行はこうして起こり、69年ぶりの国内での流行となりました。
今年の夏も、昨年と同様にデングウイルス感染症が流行する危険があります。蚊に刺されないようにすることが唯一の予防法ですので、日中に屋外で行動する際には、長袖、長ズボンを着用して肌を露出しないようにします。蚊忌避剤や蚊取り線香は効果的です。今のところデング熱に効く薬はありませんので、刺されないようにくれぐれも気をつけてください。

韓国のMERSも終わったわけではありません!

中東呼吸器症候群(MARS)は、流行地域である中東諸国(ヨルダン・クウェート・カタール・アラブ首長国連邦・サウジアラビア・イエメン・オマーン・レバノン・イラン)でラクダとの接触を介して感染が拡大し、韓国で流行してしまった動物由来コロナウイルス感染症です。感染してから2~14日後に、呼吸器症状(発熱・咳・息切れや呼吸困難など)を引き起こします。
高齢者や基礎疾患を持つ者では、重症化傾向がありますが、一般的にはそれほど致死率の高い疾患ではありません。韓国でも、医療機関での不十分な感染防御・予防により生じた限定的なヒト-ヒト感染です。特別な治療方法やワクチンはありません。予防対策としては、一般的な衛生対策としての手洗い・うがい・マスク着用で十分防げるとされています。
デング熱やMERSなどの疾患は、海外ではまだまだ流行しています。この夏休みに海外へ旅行される方も多いかと思います。日本人も、どこかにそういった感染症に対して無防備のところがあり、いつ国内に持ち込まれて流行してもおかしくない状況の国であると思います。是非身近な予防対策をしっかり行って、楽しい夏休みをお過ごしください。