椿の花通信 89号(8月号)
なぜ風疹が流行しているのか?
“1回かかったら大丈夫”の誤解
「自分は子供のころに風疹に罹った、またはワクチンの接種を受けた記憶があるので大丈夫」という方がいらっしゃいます。はたして本当に大丈夫でしょうか?
まず予防接種については、1回の予防接種ではウイルスに感染するのを防ぐ「抗体」が体の中で十分に作られないケースが5%弱あります。つまり確実ではないということです。
また、過去に一度予防接種を受けたことがあっても時間の経過に伴って「抗体」が減少することがあり、感染する可能性があるということです。
このため今の子どもたちは2回接種を受けてワクチンの効果を高めていますが、平成2年4月1日以前に生まれた人(現在23歳以上の方)は、子どもの頃に1回しか接種の機会がありませんでしたので、「妊娠を希望している女性は特に2回受けてほしい」と呼びかけています。
一度風疹に罹った人は、生涯風疹に罹ることはありません。しかし、子どもの頃に風疹に罹った記憶がある方の中には、実際には「りんご病」など別の病気だったのを本人や親御さんが勘違いしているケースも少なくありません。ある専門家が風疹に罹ったことがあると答えた人の血液検査をしたところ、約半数が実際は風疹ではなかった、という調査結果があります。
「昔罹ったから、大丈夫。」という「思い込み」にはご注意ください。
なぜ20~40代の男性に多いのか
今年に入って国内の感染者は2000人を超え、昨年同時期の20倍以上を過去最悪のペースで感染が広がっています。患者様の8割近くが男性で、その大半が20代から40代です。ではなぜこの年代の男性に風疹患者が多いのでしょうか?それは子どもの頃、予防接種の対象でなかったり、対象であっても受けていなかったりして、抗体のない人が多いためなのです。
昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性は特に注意してください。中学生の時に学校で集団接種が行われていましたが、対象は女子だけでした。
昭和54年4月2日から昭和62年10月1日生まれの人は男女とも要注意です。この時期は男女ともに中学生がワクチンを接種することになりましたが、学校での集団接種ではなく個別に医療機関で受けることになったため、男女ともに接種する率が激減しました。
昭和62年10月2日から 平成2年4月1日生まれの人は、男女とも要確認です。男女ともに幼児期に接種する機会があり、接種率は比較的たかかったものの、受けていない人や1回の接種だけでは抗体が不十分な人がいて 、こうした20代から40代の間で今感染が広がっているとみられています。
当院では、成人の予防接種は行っておりませんが、情報として提供させていただきました。